「この建物は、現在の建築基準には適合していません」
中古住宅の売却調査でこう言われると、
「違法に建てられた家なの?」
と心配になるかもしれません。
しかし、現在の基準に合っていない建物が、すべて違反建築物というわけではありません。
建築された当時は法令に適合していたものの、その後の法改正や都市計画の変更などによって、現在の基準には合わなくなった建物があります。
これが既存不適格建築物です。
今回は三重県を中心に、既存不適格建築物を売却するときに確認したいポイントを解説します。
既存不適格建築物は「違法建築」なの?
既存不適格であることだけを理由に、違反建築物とはなりません。
津市も、既存不適格建築物について、
建築基準法の改正や用途地域など都市計画の変更によって、それまで適法だった建築物が新しい基準に適合しなくなったもの
と説明し、違反建築物とは区別しています。
例えば建築後に、
用途地域が変更された
建ぺい率・容積率の規制が変わった
防火・避難関係の基準が強化された
道路や建築に関する規定が変更された
といったケースです。
一方、建築した当初から基準に違反していた部分や、後から無許可・不適切な増築をした部分まで既存不適格になるわけではありません。
ここを分けて確認することが重要です。
既存不適格の家でも売却できる?
売却そのものが一律に禁止されるわけではありません。
ただし買主にとっては、
どの規定が現在の基準に合わないのか
現在の建物をそのまま利用できるのか
大規模リフォームできるのか
建替えた場合に同じ大きさを確保できるのか
が重要になります。
そのため、
「古いから既存不適格だと思います」
と推測するのではなく、過去の建築確認資料と現在の規制を確認します。
2025年4月から大規模リフォームのルールが変わった
2025年4月1日の建築基準法改正は、中古住宅を売却するときにも知っておきたいポイントです。
現在は、2階建て木造一戸建て住宅などで、主要構造部の過半を修繕・模様替えする大規模な修繕・大規模な模様替えを行う場合、原則として建築確認手続が必要となっています。
例えば、一定規模の階段の架け替えや屋根の全面的な改修などが該当することがあります。
一方、
キッチン交換
トイレ交換
浴室交換
手すり設置
など、工事内容によっては大規模修繕・模様替えに該当しないものもあります。
つまり、
「古い家を買って全部リフォームすればいい」
と単純には考えられません。
特に既存不適格建築物では、工事内容に応じて現況や既存不適格部分の確認が重要になります。
既存不適格ならリフォームできない?
一律にリフォームできないわけではありません。
既存不適格建築物には、増築・改築・大規模修繕などを行う際、一定の条件で現行基準の適用を緩和する仕組みがあります。
四日市市でも、既存建築物への増築等について、検査済証の有無、既存不適格部分、過去の改変状況などを確認する取扱いを定めています。
したがって、
既存不適格=一切工事できない
ではありません。
逆に、
既存不適格だから昔の状態のまま自由に改修できる
という意味でもありません。
工事計画ごとの確認が必要です。
検査済証が見つからなければ違反建築?
これも同じではありません。
古い実家を相続すると、
「確認済証も検査済証もありません」
ということがあります。
書類を紛失しているだけの場合もあり、検査済証が手元にないことだけで直ちに違反建築とは判断できません。
【お役立ち情報】四日市市では過去の建築確認記録を調べられる
四日市市では、過去に建築確認を受けた建築物について、現存する建築確認台帳の内容を証明する建築確認台帳記載事項証明書を交付しています。
証明書では、
建築物の用途
構造
面積
確認済証番号・交付日
検査済証番号・交付日
などを確認できます。
確認番号が分からない場合でも、登記事項証明書など建築時期が分かる資料を用意して調査できる場合があります。
ただし、この証明書は現在の建物が建築基準法に適合していることまで証明するものではありません。
ここは重要なポイントです。
検査済証がない建物を増築する場合は?
四日市市では、検査済証等が確認できない既存建築物へ増築等を行う場合、建築士による現況調査を行い、現況調査報告書を確認申請へ添付する取扱いを示しています。
つまり、
「昔の書類がないから何もできない」
と決めるのではなく、
残っている行政記録を調べる
↓
現在の建物を調査する
↓
工事可能性を確認する
という順番で整理できます。
昔の増築がある住宅には注意
既存不適格と特に混同しやすいのが、昔の増築です。
例えば、
30年前に一部屋増やした
ベランダを室内にした
車庫の上へ部屋を増築した
という場合、その工事が当時必要だった手続を行っていたのかを別途確認します。
後から行った工事そのものが違反している場合、それを「昔の建物だから既存不適格」と整理することはできません。
マイダス独自目線①「古い=既存不適格」と決めない
査定では、
建築当初の状態
と、
その後追加された部分
を分けて見ることが重要です。
建築当初は適法でも、途中の増築だけ確認が必要という住宅もあります。
建替えたら同じ大きさの家を建てられる?
ここも売却価格に関係する重要なポイントです。
現在大きな住宅が建っていても、解体して新築するときには原則としてその時点の規制が適用されます。
現在の、
建ぺい率
容積率
用途地域
高さ制限
接道条件
防火関係規制
によっては、
既存住宅より小さな建物しか建てられない
可能性があります。
そのため建替え目的の買主へ販売する場合は、現在の建物面積だけでなく、更地にした後の建築条件も確認することが大切です。
マイダス独自目線②「今ある建物の価値」と「建替え後の土地価値」を分ける
既存不適格住宅では、
今の建物を利用する買主
と、
解体して新築したい買主
で評価が変わる場合があります。
そのため査定では、
現建物を利用する前提
と、
建替える前提
を分けて考えることが重要です。
よくある質問
Q. 既存不適格建築物は違法建築ですか?
同じではありません。建築当時は適法だったものが、法改正や都市計画変更などによって現在の基準に合わなくなったものが既存不適格建築物です。
Q. 既存不適格の住宅は売却できますか?
売却できる可能性があります。ただし、既存不適格となっている内容や増改築履歴、将来の建替え・改修条件を整理することが重要です。
Q. 検査済証がなくても売却できますか?
検査済証が見つからないだけで、直ちに売却できなくなるわけではありません。自治体の建築確認台帳等に記録が残っていないか確認します。
Q. 2025年4月から古い家はリフォームできなくなったのですか?
そうではありません。2階建て木造住宅などで一定の大規模修繕・模様替えを行う場合に建築確認が必要となりました。通常の設備交換など、対象外となる工事もあります。
まとめ
「現在の基準に合わない=違反・売れない」と決めつけない
津市、四日市市、鈴鹿市、桑名市などで古い中古住宅を売却するとき、
「現在の建築基準に適合していない」
と言われることがあります。
しかし最初に確認したいのは、
建築当時は適法だったのか
何が既存不適格なのか
後から違反となる増改築をしていないか
建築確認・検査記録が残っているか
現在の建物を利用できるか
建替え・大規模改修ではどんな制限があるか
という点です。
特に2025年4月以降は、2階建て木造住宅などの大規模リフォームで建築確認が必要となるケースが増えています。
だからこそ、
古い=違法
現在の基準に合わない=売れない
と決めつけるのではなく、
建築当時の適法性と、その後の変更、現在の規制を分けて調べること
が重要です。
株式会社マイダスの公式サイトでも、既存不適格・再建築不可・未登記建物など、一般的な中古住宅より確認事項の多い物件を相談対象として案内しています。
なお、現在マイダス公式サイトで買取強化地域として明示されているのは大阪・兵庫・奈良です。三重県の物件については、相談・対応の可否を事前に確認してください。
現在の法律だけを見て判断するのではなく、「この建物が建ったときはどうだったのか」までさかのぼる。
それが、既存不適格建築物を正しく整理する第一歩です。





