空き家になった長屋はどうする?売却・保有・活用・解体を判断するポイント
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- 2026/09/23
空き家になった長屋をどうするべきか、所有形態、相続登記、連棟構造、接道、管理不全空家、大阪市の改修補助制度から解説。
売却・保有・活用・解体を比較するポイントを紹介します。
空き家になった長屋について、「売るべきか」「残すべきか」「改修して使えるのか」と迷う方は少なくありません。
長屋は一般的な戸建てと異なり、隣接する住戸と戸境壁、屋根、基礎などが構造的につながっていることがあります。
さらに、土地や建物の所有形態、接道、私道、隣接所有者との関係によって、売却や工事の進め方が変わります。
そのため、「古いから売れない」「空き家なので解体する」と先に決めるのではなく、どこまでを所有し、何を単独で決められる長屋なのかを確認することが出発点です。
全国の空き家は900万2,000戸
総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万2,000戸、空き家率は13.8%となり、いずれも過去最高でした。
ただし、この数字には戸建て、長屋、共同住宅の空室、賃貸用・売却用住宅など、さまざまな物件が含まれています。
空き家が増えているからといって、長屋が一律に売れにくいとは限りません。
実際の売却可能性は、立地、所有形態、接道、建物状態、入居状況、価格などによって異なります。
まず「一棟全体」か「一戸だけ」かを確認する
長屋には、大きく分けて次のような所有形態があります。
- 一人の所有者が長屋一棟と敷地全体を所有している
- 連なった住戸ごとに土地・建物の所有者が異なる
- 建物が区分所有になっている
- 土地を複数人で共有している
- 借地上に長屋が建っている
一棟全体を所有している場合は、入居者の有無や賃貸借契約を確認したうえで、一棟の収益物件や古家付き土地として売却を検討できます。
一戸だけを所有している場合は、自分の所有部分を売却できる可能性があっても、屋根、戸境壁、基礎、配管などが隣接住戸と一体になっている場合があります。
区分所有長屋では法律関係や管理上の問題が複雑になりやすいことから、国土交通省のモデル事業でも、区分所有長屋に特化した対応方法が検討されています。
売却前には、土地・建物の登記事項証明書、公図、建物図面などを確認しましょう。
相続した長屋は名義を整理する
相続した長屋が亡くなった方の名義のままになっている場合は、相続登記が必要です。
相続登記は2024年4月1日から義務化されました。
相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から、原則として3年以内に申請しなければなりません。
遺産分割によって取得者が決まった場合も、成立日から3年以内に、その内容を反映した登記が必要です。
正当な理由なく申請義務を怠ると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
相続人が複数いる場合は、次の内容も整理します。
- 誰が長屋を取得するのか
- 共有名義で保有するのか
- 売却に相続人全員が同意しているか
- 売却代金や工事費をどのように分担するか
- 売却まで誰が管理するか
相続登記が終わる前でも査定や建物調査はできます。名義整理と売却方法の検討を並行して進める方が現実的です。
一戸だけ空いている長屋は空家法上の扱いが異なる
長屋一棟がすべて空いている場合と、一部の住戸だけが空いている場合では、空家法上の扱いが異なることがあります。
ほかの住戸に居住者がいる場合、建物全体が常態として使用されていないとはいえず、空家法上の「空家等」に該当しない場合があります。
一方で、一部住戸の空室や管理不全が、隣接住戸の居住環境や建物全体へ影響する問題は残ります。
2026年度の国土交通省のモデル事業でも、現行制度上、空家等に該当しないことがある「一部居住長屋」への予防的な対応が課題として取り上げられています。
大阪市も2026年度からの空家等対策計画で、空家法上の空家等だけでなく、一部に居住者がいる長屋の空き住戸を対策対象に含めています。
したがって、「一戸だけ空いているので行政上の問題はない」とは限りません。所在地の自治体における条例や対策方針も確認する必要があります。
放置ではなく定期的な管理が必要
長屋を当面保有する場合でも、空き家部分の定期的な管理が必要です。
国土交通省は、空き家の管理として、通気・換気、排水設備の通水、敷地内の清掃、庭木の剪定、郵便物の確認などを挙げています。
長屋では、空き家部分の雨漏りや屋根の損傷が隣接住戸へ影響することも考えられます。少なくとも、次の項目を定期的に確認しましょう。
- 屋根材や外壁の破損
- 雨漏りや室内の湿気
- 戸境壁や柱の傾き
- 給排水設備からの漏水
- 庭木や雑草の越境
- 窓や玄関の破損
- 不法侵入や郵便物の滞留
遠方に住んでいて自分で確認できない場合は、親族や空き家管理事業者などへの依頼も検討します。
勧告を受けると住宅用地特例へ影響する
空き家になっただけで、固定資産税などの住宅用地特例が直ちに外れるわけではありません。
ただし、建物全体が空家法上の空家等に該当し、管理不全空家等または特定空家等として市区町村から指導を受け、改善されないまま勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から除外されます。
一部に居住者がいる長屋では、空家法の適用関係が異なる場合があるため、個別確認が必要です。
また、特例が外れても固定資産税額が単純に6倍になるとは限りません。実際の税額は土地の評価額や負担調整措置などによって変わります。
選択肢1 現状のまま売却する
長屋は、建物を残したまま中古住宅や収益物件として売却できる場合があります。
売却前には、次の条件を確認します。
- 一棟売却か一戸売却か
- 土地と建物の所有関係
- 入居者と賃貸借契約
- 屋根、戸境壁、基礎の状態
- 接道、私道、通行・掘削条件
- 再建築の可否
- 隣接住戸との修繕・工事履歴
- 家財や残置物
一般の住宅購入者だけでなく、改修を前提とする買主、賃貸経営を考える事業者、隣接住戸の所有者などへ提案できる場合もあります。
家財処分や大規模な改修を先に行っても、費用を売却価格で回収できるとは限りません。
まず現状で査定を受けることが大切です。
選択肢2 期限を決めて保有する
将来自分や家族が使う予定がある、相続人間の協議に時間が必要といった場合は、一定期間保有する方法もあります。
ただし、「そのうち考える」という保有ではなく、次の内容を決めておきましょう。
- 誰が見回りと清掃を担当するか
- 税金・保険・修繕費を誰が負担するか
- 隣接所有者から連絡があった場合の窓口
- いつまでに名義や境界を整理するか
- いつ売却・活用を再検討するか
例えば、「1年以内に活用方法が決まらなければ売却を比較する」など、見直し時期を決めることで先送りを防ぎやすくなります。
選択肢3 改修して活用する
立地、構造、地域需要が合えば、住宅、賃貸物件、地域交流施設などとして再生できる可能性があります。
大阪市では2026年度も、一定の戸建て・長屋建て空き家を対象に、インスペクション、耐震診断、耐震改修、性能向上工事などを支援する空家利活用改修補助制度を実施しています。
ただし、主な要件には次のものがあります。
- 大阪市内にある
- 2020年5月31日以前に建築された戸建てまたは長屋建て
- 3か月以上空き家である
- 売却用・賃貸用として市場で流通していない
- 所定の耐震性を確保する
- 売却を前提とした改修ではない
長屋で耐震性が不足している場合は、補助制度上、原則として棟全体で耐震性を確保する必要があります。
共有名義や区分所有の場合は、建物所有者全員の同意が必要になることもあります。
この制度は大阪市内限定です。堺市、東大阪市、八尾市、岸和田市などでは、それぞれの自治体の制度を確認する必要があります。
選択肢4 解体を検討する
建物の傷みが著しく、再生や現状売却が難しい場合は、解体も選択肢になります。
ただし、長屋の一戸だけを解体する場合は、隣接住戸の屋根、外壁、防水、構造安全性へ影響する可能性があります。
所有者の判断だけで工事を始めず、建築士による調査と隣接所有者との協議が必要です。
また、解体後に再建築できない土地では、現在の建物を取り壊すことで利用価値が下がる場合があります。
大阪市には、対象区域や建物条件を満たす老朽住宅について、長屋の一部解体を含む除却補助制度もありますが、工事契約・着手前の申請が必要です。
解体前には、現状売却、直接買取、解体後の土地売却について、費用を差し引いた手取り額を比較しましょう。
空き家になった長屋を整理する順番
空き家になった長屋は、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 一棟全体か一戸だけかを確認する
- 土地・建物の登記名義と所有範囲を調べる
- 相続人・共有者・隣接所有者を確認する
- 屋根、戸境壁、基礎などの構造を調査する
- 接道、私道、再建築の可否を調べる
- 入居状況と賃貸借契約を確認する
- 現状での売却価格と今後の管理費を把握する
- 売却・保有・活用・解体を比較する
大阪市、堺市、東大阪市、八尾市、守口市、門真市、豊中市、岸和田市など大阪府内でも、空き家になった長屋の整理方法は、所有形態、接道、建物状態、隣接住戸の状況によって異なります。
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空き家になった長屋は、必ず売るべきものでも、改修して残すべきものでもありません。
大切なのは、一棟か一戸か、どこまでを所有しているのか、隣接住戸とどの部分がつながっているのか、再建築や改修が可能なのかを確認することです。
「そのまま置いておく」のではなく、管理を続けながら売却・保有・活用・解体の費用と実現可能性を比較することが、長屋の判断を難しくしないための第一歩です。










